パフォーマンスに於ける思考3

ヒトにはパーソナルスペースというものが存在する。
これはステージに立ち会っている観客にも当然の様に在る。

私は自らのパフォーマンスの性質ゆえに、観客に警戒心を抱かせる事が多々有る。
衣装や所作の特性上、表情や性別が分かりにくく
さらに球体が浮いているのか仕掛けがあるのかも分からない。

警戒している状態でもパフォーマンスを楽しむ事は可能であろうが
ショーの最後にはその警戒を解かせ、観客・演者ともにカタルシスを得る事が
ライブの醍醐味とも言える。

その警戒を解く鍵がパーソナルスペースであった。

それはパフォーマンスの最後に球体を観客に渡すだけである。
渡し方にはコツがある。
ただ渡すのではなく相手の手からほんの少しだけ浮かせた所から落とすように渡す。
すると相手やその瞬間を観ている方々は重力を感じてしまう(※)のです。
これが非現実の世界が現実に変わる瞬間である。

(※「しまう」という表現を使用したのは、非現実の世界を楽しみに
来ている方々を現実に引き戻してしまう行為からの罪悪感ゆえです。)

非現実が現実に変わってしまう反面、観客はライブの実感を
より得る事ができるのではないかと想像している。

なお、球体を円滑に回収する事が困難な場合等もあるので
球体は毎回渡すわけではなく臨機応変に行う。

そして私が考えるライブに於けるパーソナルスペースの活用は、未だ実験段階である。