生命の輪郭

その男には家族がいなかった。
孤独に打ち震えている命を拾ったのだ。
十数年の月日が経過し、今、その男は死を迎えようとしている。
目前に迫る死に抗う姿勢は本能そのものであった。
視力やいくつかの内臓の機能が低下している。口腔内は荒れてしまい数日間水分すら摂取出来ず、終いには立ち上がろうとし転んでしまう。
死が近い。おそらくかなり近くに死はある。
最早耳が聴こえているかも分からないが私はゆっくりと口ずさみ音を奏でた。

そして生命の終わりを感じ取った。