先に書いた思考から続く。
ヒトは不可能なもの、不可解なものに魅力を感じる傾向があると思案した。
その要素のひとつが浮遊感である。
あらゆるスポーツや音楽にも浮遊感はとても重要な要素だと考えている。
その為、パフォーマンスには緻密な設計が必要と考えた。
見る側の目の構造もその設計には欠かせないものである。
例えば、ネコ科の瞳孔は縦に長く上下の運動に対応し
草食動物の瞳孔は横に長く広域を見渡す構造になっている。
そしてヒトの瞳孔は丸く視野に入る上下左右すべての領域を捉えている。
その為、少しの動きの誤差でも見抜く事ができる構造。
1mmの落下でも重力を無意識に感じてしまう。
その瞳孔の構造に基づき、重力を感じさせぬ様に
コントロールの精密さを徹底して磨いた。
また、緩急も大切とする。最初に着目したのは静と動。
その間に緩急をつける事によって私の世界観が成り立つ。
衣装はシンプルに白と黒で構成。
それは錯覚を増幅させる効果を期待した為である。
浮遊感・静と動・緩急・衣装・音楽等を利用し
手品ではなく技術、タネや仕掛けではない物理的な作用によって
パフォーマンスする事により、意図的に「錯覚」を成立させている。